眺めて美しいだけでなく、関わって楽しい空間へ。

「デザイン」と「プログラム」の両立。

緑豊かな自然環境と連続させ、建物全体を地形と見立てた緑の丘を形成する。ランドスケープでは「大きな環境」をデザインすることで、誰もが美しいと思える空間を作りました。でもそこには、多種多様なリハビリテーションプログラムがこっそり組み込まれています。例えば、散歩ができるツツジの小径。緩やかな傾斜や蛇行を取り入れ、さまざまな条件の道で歩けるようになるための、リハビリテーション機能を潜ませました。また道々にあり、季節の植物が楽しめるように配置されたコンテナも、疲れたら軽く腰掛けられるようにしてあります。

また今回、いろいろな場所に3つの石のアートも設置しますが、そこにもリハビリテーションプログラムが組み込まれています。例えば中庭にある「utsushi」と名付けたアートベンチは、原石から切り出した10個の石のオブジェですが、石と石を不揃いに置くことで、そこを通り抜けたり、大きさの違う石に座ることができます。レストランの前庭に立つ「tomarigi」と名付けた高さ1メートルほどの六方石には、鳥がやって来るような仕掛けを施すなど。ここでの環境すべてがリハビリテーションに繋がるように考えられています。

最終的には、病院を囲む「森」を創ります。

今回完成したのは、全体計画のまだ一部分です。例えば、水をテーマに全体をつなぐ計画があります。水が湧き出て、池となって水を湛え、せせらぎとなって水が流れ、滝となって水が落ちる。表情を変える水の変化をたどることが、患者さんを外へ外へと誘うように考えられているのです。今回は起点となる湧水の部分とビオトープ的な要素も組み込んだ小さな池が完成しています。この池では、工事途中に現れ、この病院のマークとなった守り神ならぬ「守り亀」を育てていきます。患者さんが自然と触れ合うことは精神的なリハビリにとても有効で、今後はさらに園芸療法の可能性も積極的に追求していきます。自分で育てたハーブでお茶を楽しむことができるなど患者さんが自然と関わることが楽しみに繋がるような空間へと発展させていく予定です。環境的にも多くの樹木を植え、最終的には豊かな命を育む森をつくりたいと考えています。

忽那裕樹

ランドスケープデザイン
忽那裕樹(くつな ひろき)

株式会社E-DESIGN代表取締役 / 技術士・建設部門(都市及び地方計画)、一級造園施工管理技士

2000年環境デザインスタジオE-DESIGNを設立。心地よく時間を過ごすことができる場所づくりを目指し、庭に始まり広場や公園づくりを手がけ、堺市鉢ヶ峰「自然ふれあいの森」では、公園プロポーザル最優秀賞を受賞している。まちづくり活動やアーバンデザインにも精通し、雑誌「OSOTO」(大阪府公園協会発行)の編集長を勤め、幅広い視点で風景のあり方を提案している。活動の場は、国内に限らず、中国四川省成都麗都花園マンションのランドスケープ・デザインも手がけている。
また京都造形芸術大学環境デザイン学科、大阪市立大学環境都市工学科など数多くの大学で非常勤講師を務めている。