病院ですが、病気の本は1冊も置きません。

患者さんにとって「効く本」を選びたい。

僕の仕事をひと言で言えば、本棚編集業。本屋さんはもちろん、洋服屋さんや家具屋さんや、銀行などの本のコーナーに置く本を選ぶのが仕事です。今回はリハビリテーション病院のライブラリーということで、はじめは病気の本を並べようかとも考えました。でも患者さんのことを知り、リハビリテーションへの理解を深めるうちに、180度考え方が変わりました。僕の職能を生かし、少しでもリハビリテーションに役立つ、患者さんにとって「効く本」を選びたいと思うようになったんです。例えばフリップブックのようにパラパラとページをめくる本なら、患者さんにとって楽しく、ページをめくる動作はリハビリにも繋がります。また絵や構造が素晴らしいポップアップブックなら、リハビリだからと意識しなくても、ページをめくりたくなるはずです。

患者さんと本との関わり方も違うべきです。

患者さんにとって読書と構えてしまうような本では、読み終えるのも大変です。だからどこから読んでも興味深く、いつページを閉じてもいい、そんな上質の短編やショートショート、「言葉」をテーマにしたような本を選びました。短時間でいい、本に集中することができれば、きっとリハビリに繋がると考えています。

また千里リハビリテーション病院には、本物の魚が泳ぐ水槽があり、四季折々の植物もあり、小鳥や虫が集まる豊かな自然があります。そんな自然との触れあいで芽生えた小さな興味から本に手を伸ばしてもらえればと、美しい図鑑や大人が見ても素敵な絵本を選び、すぐに手に取れる場所にさりげなく置くような工夫もしました。

この他にも、懐かしくて思わず手にとってしまいそうな本、自分も早く元気になって出かけてみたいと思ってもらえるような「旅」をテーマに選んだ本、悠久の時間をゆったりと楽しむ「歴史」をテーマに選んだ本などを、興味を呼び覚ますようなセグメントをしてライブラリーに並べます。本の持つ可能性をさらに追求し、患者さんの話を聞き、最良の1冊と出会っていただけるようなブックセラピーにも、挑戦してみたいと思っています。

ライブラリー 書籍一覧
つかう本 (監修: 幅 允孝・千里リハビリテーション病院)

中村貞裕

ライブラリーディレクション
幅允孝 (はば よしたか)

BACH(バッハ)代表 / ブックディレクター
www.bach-inc.com

TSUTAYA TOKYO ROPPONGI や LOVELESS、CIBONE、国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロム トーキョー」などにおける本のディレクションを行う。その他編集、執筆、企画、ディストリビューションなど、本をツールに幅広い分野で活動中。東京ミッドタウン / スルガ銀行のハイパーライブラリー「d-labo」のディレクションや、フラワーアーティスト東信のプライベートギャラリー[AMPG]のための冊子『AMPP』の制作も行っている。