「病院」を「住まい」として設計しました。

プランの基本は、高齢者ケア施設。

10年前、「高齢者ケア施設設計競技」というアイデアコンペで入賞した私たちのプランを本で見て、そのプランを病院として実現したいと、橋本理事長からお電話をいただいたんです。最初は驚きましたが、私もこれまで病院の設計に多く関わり、住居とリハビリテーション病院の環境は遠くないと考えていたので、すぐに納得できました。でもここまで徹底的に病院を住まいとして設計したのは千里リハビリテーション病院が初めてです。

普通の病院は、ベッド数50位をひとつの単位として、ナースステーションを取り囲むように病室が配置されていますが、千里リハビリテーション病院は、まったく違います。6人の家族が住まう住宅を最小のユニットにして、それをいくつか組み合わせて、病院全体をつくりました。患者さんのリハビリテーションの最終目的は自宅に帰って暮らすことができるようになることですから、「病院」というより「住宅」である必要があるのです。だから、病院らしさをできるだけ排除し、お風呂、キッチン、寝室、家族が談笑するリビング、自宅での生活を想定した舞台装置をつくったのです。

患者さんは自由に「居場所」が選べます。

「選択肢を奪うことは、選択をする能力をもいずれ奪ってしまう」これは、アメリカの認知症関係の書籍を翻訳している時に出会った言葉なのですが、今回は特にこのことを大切に、設計にあたりました。一般の病院では、病室以外に患者さんの「居場所」がほとんどありません。病室にいるか、外来の広いところにいるか、それくらいの選択肢しかないのです。千里リハビリテーション病院では、広さや明るさ、環境的に多種多様な患者さんの「居場所」をたくさん用意しました。病室は完全個室なので、自分の部屋にいるような感覚で過ごせるし、そのままテラスに出てリラックスすることもできます。数人で過ごせる居間や、12人で集まれるリビングもあるし、レストランもあります。屋上には庭園もあり、ゆっくり散歩が楽しめる回遊型の庭もあります。患者さんには、その時々の気分でご自由に自分の意志で「居場所」を選んでいただけるはずです。

川島浩孝

設計監理
川島浩孝 (かわしま ひろたか)

株式会社共同建設設計事務所 常務取締役 医療施設計画部部長
www.kyodo-aa.co.jp

1991年西神戸医療センター新築工事において設計監理を担当。個室的多床室コンセプトを日本で初めて実現させ、「医療福祉建築賞1995」受賞。1994年稲城市立病院移転新築工事で設計監理主任。公的病院として初めての免震構造を採用。「医療福祉建築賞1999」「日本免震構造協会作品賞」受賞。1996年愛知県厚生連渥美病院移転新築工事で設計監理主任。「医療福祉建築賞2002」受賞。現在、日本医療福祉建築協会理事も務めている。