【院長ブログ】目黒区で開院して半年。脳卒中リハビリテーションの「維持期」にこそ伝えたい希望の話
こんにちは、千里リハビリテーションクリニック東京院長の弘前充嗣です。 おかげさまで、当院は目黒区で開院してから無事に半年を迎えることができました。
開院以来、地元の皆様はもちろん、渋谷区や世田谷区といった周辺の広い地域からも多くの患者様にご来院いただき、こうして地域医療の一端を担えることに心から感謝申し上げます。
日々の診療に全力で向き合うあまり、ホームページでの情報発信がすっかり後回しになってしまっていましたが、これが記念すべきブログ第1号となります。 今後は診察室だけでなく、このブログを通じても、皆様の健康や脳卒中リハビリテーションに役立つ最新の医学情報をお届けしていきたいと思います。
さて、記念すべき最初の記事では、この半年間、外来で多くの患者様からご相談いただき、私がどうしても伝えたかった「リハビリの期間と可能性」についてお話しします。
「発症から半年が限界」という誤解
当クリニックの外来には、脳卒中の発症から時間が経過し、退院後のリハビリテーションに励む患者様が多くいらっしゃいます。その中で、よく耳にする悲しい言葉があります。
「保険の期間が終わったから、これ以上は良くならないと言われました」 「これからは『維持』が目的だと言われました」
もし、あなたがそう言われて「もう諦めるしかない」と思っているなら、どうかその考えを一度リセットしてください。 専門家として断言しますが、「保険制度上の期限」と「あなたの身体の回復期限」はイコールではありません。
今回は、2022年から2024年にかけて発表された最新の医学的根拠(エビデンス)に基づいて、なぜ維持期(生活期)であっても改善の可能性があるのかをお伝えします。
1. 時期に関係なく、脳は変化する(2024年の知見)
かつては「大人になった脳細胞は再生しない」と言われた時代もありました。しかし、現在の脳科学では「神経可塑性(脳の回路がつなぎ変わる性質)」が常識となっています。
「なぜ運動で脳が変わるのか?」 2024年の研究レビュー(参照)では、しっかりと負荷をかけた運動を行うことで、脳の神経回路を修復する「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質が体内で増加することが確認されています。 つまり、適切な運動療法は、脳への直接的な「栄養」となり得るのです。この脳の変化に「発症から半年」という期限はありません。
2. 重要なのは「時期」ではなく「強度」
では、なぜ「半年で良くなるのが止まる」と言われるのでしょうか? 近年の研究では、それが生物学的な限界ではなく、退院後の「リハビリ強度の不足」によるものであることが分かってきました。
2022年に発表された大規模な研究(Ballesterら)(参照)では、「発症から時間が経過していても、高強度のリハビリテーションを行えば機能は改善する」という勇気づけられるデータが示されました。この研究は、「適切なリハビリ強度は、開始の遅れ(慢性期であること)をカバーできる」ことを示唆しています。
また、2024年の米国最新ガイドライン(VA/DoD)(参照)でも、慢性期の歩行改善のために、従来のゆっくりとした練習ではなく、心拍数を上げるような「高強度の歩行トレーニング」が強く推奨されています。
良くならないのは「時期のせい」ではなく、「脳を変えるのに必要な刺激が足りていない」だけかもしれないのです。
3. 諦めない「伴走者」として
日本の保険制度にある「標準的算定日数(150日・180日)」は、あくまで制度上の区切りです。 もちろん、発症直後のような劇的なスピードでの変化は難しいかもしれません。しかし、正しいアプローチを積み重ねることで、身体は確実に変化します。
「もっと良くなりたい」「やりたいことがある」 その気持ちがある限り、脳卒中リハビリテーションは終わりません。
当院は、この半年間で出会った患者様、そしてこれから出会う患者様の「諦めたくない想い」に、最新の医学的視点と情熱を持って応える伴走者でありたいと考えています。
「もう遅いかな」と悩まず、現在の状況やお悩みについて、まずは一度診察室でお聞かせください。 目黒区はもちろん、渋谷区、世田谷区など近隣エリアにお住まいの皆様の「回復したい」という気持ちに寄り添い、一緒に可能性を探していきましょう。