柊木犀

千里ではキンモクセイの花はすっかり終わってしまい、あの甘い香りはありません。
私の故郷の家の隣にあったお寺の境内に大きなキンモクセイの木がありました。花が終わると一斉に落下して、一面、黄金色の絨毯になるのです。実際には茶色がかった絨毯ですが、一応、キンモクセイですから、黄金の絨毯と言わせてください。
子供の頃はその絨毯を土俵に見立てて、相撲を取ったりしていました。今考えてみると、とても贅沢な遊びをしていたものだと思います。投げ飛ばされて、擦り傷ができても平気でした。そこらからヨモギの葉を採ってきて、手のひらで擦り潰し、しばらく傷口に押し当てるのです。ヨモギには止血作用がありますから、子供ながらとても理にかなった行為をしていたわけです。そのような知恵を教えてくれたのは親であり、兄姉であり、近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんたちでした。そのような関係性がなくなってきている現代社会はちょっと寂しいと思います。人間の知恵が異質になっていくのを感じます。

千里の住まいは大きな団地の一角にありますが、いたるところにヒイラギモクセイの垣根があります。鋸のような葉の棘が魔除けになる、という謂われからだろうと思います。垣根ですから、毎年のように剪定というか、しっかり刈り込まれてしまいます。もちろん丈夫な植物ですからそれでもよいのですが、ちょっと問題があります。ほとんど花を見かけることがないのです。ヒイラギモクセイは柊と銀木犀の雑種ですから、ギンモクセイと同じような花を咲かせます。昨日、駐車場周りの垣根を1周してやっと見つけた貴重な花です。香りはキンモクセイのような強い甘い香りはありませんが、ほのかな甘い香りがします。
高校生のとき、生物研究部で活動していたのですが、文化祭でヒイラギモクセイの葉で栞を作って販売していたことを思い出します。きれいな大きい葉を採取してきて、葉肉を溶かしてブラシで叩きながら葉脈だけにして、赤や黄色などで染色するのです。とてもきれいな栞でした。
柊木犀の花言葉は「ためらい」や「あの日を思い出す」。
モクセイにはいろんな思い出が詰まっているのです。

コメント (13)

  • senri より:

    shimizuさん、こんにちは。初めてのコメントをいただき、ありがとうございます。
    これからもどんどんコメントをお寄せいただけると嬉しいです。
    ところで、小脳の神経回路ですが、手ごろなところでよろしいでしょうか?
    私と原先生で編集した「脳卒中理学療法の理論と技術 メジカルビュー」の47ページから解説してあります。
    また、「神経解剖カラーテキスト 医学書院」にも解説してあります。
    欧文も論文でいろいろございますよ。

  • senri より:

    maimaiさん、こんにちは。
    サテライトカンファレンス神奈川にお越しいただき、ありがとうございました。
    初めての試みのカンファレンスで、進行の深度に少し不安もありましたが、いい感じで進めることができました。
    さらに突っ込んだ内容になるよう努力してまいりますので、応援、よろしくお願いいたします。
    Reasoningできるようにするためにはいろんな引き出しを持っている必要があると思います。物事は多角的に見た方がより客観視できるでしょう。そのための情報をしっかり脳に入れて、さらにそれを使って初めて本当の知識になると思います。
    このところ木犀や柊がたくさん登場してきました。ちょっとしたことから皆様に話題を広げていただき、木犀も柊も喜んでいることでしょう。

  • maimai より:

    吉尾先生、こんにちは。
    先日は、神奈川でのサテライトカンファレンスにて、また熱いお話をありがとうございました。
    現象のみでもダメ、機械からの分析のみでもダメ、画像が見れなくてもダメ、そんなことを改めて思いながら聞いておりました。出席していて、自分の知識の程度も少しわかり、新たに自分にできること、すべきことがなんとなく、ぼんやりですが、出てきたように思います。
    先生の苦しそうな声が心配です。早く治りますように・・・
    さて、柊木犀!ハロウィンが終わり、次はクリスマスですね。私は、セイヨウヒイラギが好きです。ツリーの代わりに鉢植えのセイヨウヒイラギを買ったこともありますが、棘に守られた小さな赤い実がとてもかわいくて!柊木犀と似ていますが、全く異なるものだとか。
    今年もあと2ヶ月ですね。このままでは悔いの残る一年になってしまいます。私も「具現化」、せねばです。

  • shimizu より:

    こんばんは。お疲れ様です。
    初めてコメントさせて頂きます。
    先生のブログ時々拝見させていただいております。先生の知識の豊富さには驚かされています。
    金木犀の匂いいいですよね。この時期が来たんだなぁと思います。
    私自身おばあちゃん子だったのでおばあちゃんから教わったことや思い出を先生のブログで少し思い出させていただきました。

    この場ではありますが、先生に質問させていただきたいことがあります。
    8月下旬に先生の勉強会に参加させていただき、非常に勉強になったとともに自分の知識の足りなさを痛感いたしました。まだまだ駆け出しではありますが、先生のように医学的な根拠を持てるようなセラピストになりたいと思いました。自分なりに勉強をしてはいますが、大脳小脳神経回路などの神経回路についてや機能についてなかなか記載してあるものが見つけることができません。そこで、よろしければ先生のおすすめの教科書や文献を教えて頂くことはできないでしょうか?
    お手数ではありますがよろしくお願いします。

  • asuka より:

    こんばんは.
    そんなに褒めても何も出ませんよ(笑)
    他者とのやり取りが自分へのフィードバックとなり,
    時には反省しながら成長していけるのだと感じます.
    頭で考えるだけではなく,やはり具現化ですね!
    こちらこそ,今後ともよろしくお願い致します.

  • senri より:

    asukaさん、こんばんは。
    物事をまとめるのがとてもうまい方だと思います。
    私の思考過程が見事にリードされていくようで、ありがたいことです。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  • asuka より:

    こんばんは.
    そのようにおっしゃって頂いて恐縮です.
    真摯な態度で物事を具現化させている先生の姿に気を引かれ,
    私の原動力の一部になっています.
    こちらこそ,心から感謝,です.

  • senri より:

    asukaさん、おはようございます。
    いやあ、まいりましたね。
    これほどたくさんのコメントをいただいている方ですよ。
    気を引かれないはずがありませんし、そもそもこのブログに興味を持っていただいている方々について、私のイマジネーションは大いに活性化されているのです。
    心から感謝、です。

  • asuka より:

    こんばんは。
    花言葉は考える程、深いなぁと感じます。
    もう一歩広げるとしたら、銀木犀の花言葉にもう一つ、
    「あなたの気を引く」がありました。
    先生の気を引けました?笑

  • senri より:

    asukaさん、こんにちは。
    木犀の話がどんどん広がっていくこの不思議さに驚いています。
    さすが、花言葉は捨てたものではありませんね。
    これからの学びにしたいと思います。
    ありがとうございます。

  • asuka より:

    おはようございます。
    良い人間関係を築くためにも、素直な態度で人に接することが必要だと感じます。
    それは金木犀の花言葉の「謙虚」「謙遜」を忘れないことなのかもしれません。
    また、銀木犀の花言葉の「高潔」も大切ですね。
    木犀のような甘い香りで患者さんの心を癒しつつ治療が行えるように、
    日々努力したいと思います。

  • senri より:

    asukaさん、おはようございます。
    いつもコメントいただき、ありがとうございます。
    育ってきた環境の影響は大きいですね。少なからず、というよりかなり根幹の部分を子供の頃の経験が左右しているように思います。それの大半はやはり人間関係からということでしょうか。
    それは臨床現場でも言えることで、私たちが良き影響過程を形成できるよう、努力していかなければいけませんね。

  • asuka より:

    お疲れさまです.
    モクセイもいくつか種類があるのですね.勉強になりました.
    「あの日を思い出す」
    私の場合,近所のお兄ちゃんお姉ちゃんよりも近所のおばあさんの家によく遊びに行き,
    かわいがってもらいました.
    悪い事をするとちゃんと叱られましたし,良い事をすると誉められました.
    そういう思い出から年配者と触れ合うのが好きになり,
    今の仕事選びに通じたのかもしれません.
    人との関係性は重要ですね.

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