歩行

2月11日に、日本神経理学療法学会主催で「歩行」について考えるサテライトカンファレンスを名古屋で開きました。
脊髄障害や脳卒中、脳性麻痺によって生じる歩行の障害について理学療法士の視点から議論してみました。症例提示やシンポジウムではフロアーからも積極的な発言がたくさんあってとてもよかったと思います。
いずれも中枢神経障害によって起こる歩行障害ですが、それぞれその機序は違います。そもそも、それぞれの歩行障害が何故起こっているのかという共通認識は、私たちの中に必ずしも存在しないことが改めて確認できた1日になりました。それぞれの疾患の中で歩行障害の見え方、受け止め方が個々によって異なり、当然のようにアプローチも違ってきます。
歩行が可能になるか否か、活動の中で実用的に利用できるようになるか否か、その違いは患者のそれからの人生に大きな影響を与えます。その対応によっては後々、歩行能力が低下したり、変形・拘縮が進んでいくことさえあります。その人生に影響を与える存在になるであろう理学療法士たちの中でその歩行に関する共通の知識、基準がないということは忌々しき問題です。歩行について最も責任を持つべき存在の私たちの世界がそのような状況であることは許されようはずがありません。今回のようなカンファレンスを通しながら、その方向性を明確に示していくことが急務であると思いました。大阪で惨敗したサテライトカンファレンスの討論の進め方はなんとかコントロールできたようで一安心です。

2016/02/12 12:28

2016/02/12 12:28

翌12日の札幌の自宅前の景色です。雪まつりの期間は真冬の寒さが続いたようですが、11日に終了した途端、春の陽気になっています。とは言っても、12日の最高気温は5度でしたが・・。
このような雪道でも社会参加するために歩くことを求められることがあります。雨の日でもそうです。その人が何をして生きていきたいのか、まずは何をできるようになりたいのか、それを実現できるようにするために、理学療法士としてどのように関わるべきか、責任をもって取り組んでいかなければなりません。ただ歩けるようにする、ということだけでは十分ではないのです。
私たちのあり様が問われています。

コメント (19)

  • senri より:

    c.t.nさん、おはようございます。
    あまり気にしなくてもよいと思います。
    Que sera, sera.
    何が真実か、まだまだ問い続けていかなければならないときです。
    ご自身を信じて、事を進めていきませんか?
    そのための基本的な学びの姿勢を持っていらっしゃいますから、あまり気にしなくてもよいと思います。

  • c.t.n より:

    吉尾先生 おはようございます。
    昨日見直ししたのですが、あやまりをみつけました。ちょっと落ち込んでしまいました。

    そういえば今年はうるう年ですね。1日長い2月も明日まで。
    もうすぐ3月ですね。

  • senri より:

    c.t.nさん、おはようございます。
    現在の自分の立ち位置、考えていることを言語化することはとても大切なことだと思います。
    このブログもそのような意味合いを持ちますし、その活動を皆さんが支えてくださっています。
    c.t.nさんがこのようにしっかりと言語化されている姿は素晴らしいことだと思います。
    日々進化です。

  • c.t.n より:

    吉尾先生 こんばんは。
    修正ですが、ICIDHの記載もありますが、動作分析ではICFの観点でシステム理論を用いて繊細にとらえていました。
    脳のシステムを理解するのは大切だとは思います。しかし見えるものだけではわからない存在も大事だとも思います。
    脳卒中理学療法ガイドラインだけでなく、理学療法・リハの推奨グレードはC1が多いといわれています。振り返ってみた時、その時に改善されたアプローチ方法を同じように行った時、適応にはならないこともあり改善策にはならないこともあります。それはグレードC1であった治療介入がグレードD(無効性または害を示す科学的根拠がある)になってしまうこともあるということです。研修会ではグレードDをはじめに知っておく必要があるということでした。
    そして理学療法教育においては本質的に生涯にわたって継続されなければならないとされています。理学療法士として生涯にわたり活躍するための資質・知識・技術に関する基礎をきづくこと、医療専門職として必要な新たな知識・技術に出会ったときに、それらを自ら学ぶための能力と習慣を形成することとも記載しています。卒前教育の到達目標を「自ら学ぶ力」と設定されています。
    今は理学療法士の中でも専門領域へ進むことが可能となっています。以前からマイページで領域の選択はしていましたが、進むことはありませんでした。自ら学ぶことをやめていましたし、経験的に表立って行うとグレードDのような状況になりかねないと感じたからです。けれど、吉尾先生はそんな私を変えてくれました。
    はじめの一歩を踏み込む時、正直言えば神経系理学療法に関して興味はありませんでした。第50回学会で行われた議論もよくわかりませんでした。私自身も改善するように取り組み、少しずつ神経系特に脳に関する研修会や学会に参加することで感じたこと、表現は難しいのですが、、
    その経験の中で私は神経系とりわけ脳卒中という専門領域を選びました。それが私の立ち位置だと思っています。

  • senri より:

    c.t.nさん、おはようございます。
    良くも悪くも、とても身になる経験を重ねてここまでいらっしゃったということがよく伝わってきます。
    それを糧に前を向いて歩く。
    時には駆けださなければならないときもあるかもしれませんが、決して急ぎ足ではなく、じっくりと歩く。
    そして、ときどき振り返る。
    そのような自己変革ができていらっしゃるc.t.nさんをいろんな方々が見ていらっしゃると思います。

  • c.t.n より:

    吉尾先生 こんばんは。
    近頃シビアな人を多くみる中で、早期から立位・歩行練習を行う光景をよく目にします。
    自身より大きな人を抱え果敢に取り組んでいました。長下肢装具を使用したり、状態に応じてにOFF等、を考慮した歩行練習など急性期の課題である可能性を最大限に引き出していく様子を感じています。実際行うことで感じることはあると思いますので修正しながら展開していこうと思います。

    以前、先生は私に「色々な研修や学会に参加することで自身の立ち位置がわかる」と言ってくれました。感じることは多くありました。それまで理学療法士としての自分自身に目を向けることはありませんでした。しかし今は、理学療法士として向き合い考えることができてきていると思っています。
    歩行練習をしなかったのは何故か、前準備の起立・立位が難渋したのは何故か。背景や経緯など事情を振り返ったり、立ち止まったりすることでわかる部分もあります。

    私は学生の頃、脳血管障害の人を担当させていただいた時があるのですが、幸い急性期から自宅復帰までの経過をみることができました。レポートに関してバイザーからのアドバイスは、もうちょっと歩行について書いてみたら?でした。歩行分析では歩行速度、歩幅、歩数を三角巾固定時・非固定時、杖使用時・不使用時のパターンで、それぞれの歩容は歩行周期の中で全体的且つ局所的にとらえていました。ADLについては主にFIMでとらえ、それぞれの項目に対して動作分析がなされICIDHの観点も含めた内容でした。今思えばよくここまで述べたものだと想っています。

    それから今まで様々な研修会に参加することで、その時のレポートには述べられていないことを新調することが出来てきていると感じてます。先生方にはとても感謝しています。
    私は確実に改善してきている人、着実に変わってきている人をみているのでそう感じてます。
    だから前を向くことが必要なのだと思います。

  • senri より:

    miyuki.kさん、おはようございます。
    お久しぶりですが、その間、とんでもない災難が起きてたようですね。
    圧迫骨折を起こした部分およびその周囲組織が痛みを感じずに動けるようになるには、それなりの月日が必要な方がいらっしゃいます。これは個人差があってなんとも言いようがないのですが、少しずつ馴らして、必ずや復活してくださいね。
    周囲の方々の温情、とても嬉しく、ありがたいことです。正に人間を感じます。
    辛い中、コメントをお送りいただき、ありがとうございました。

  • miyuki.k より:

    お久しぶりです。昨年の4月から消化器内科・外科・呼吸器内科・外科の処置室で働き一度がん患者の体験をしている私には、癌患者さんの末期の方との対応が多く患者体験を生かした仕事が出来、生きがいを持ち働いていました。年末には甥の子供3人預かりマンションの公園、グランドで鬼ごっこ、サッカーが出来るまで回復していました。しかし、1月5日の帰宅中淀屋橋の構内で突然雑踏の中から走ってきた人に当たられ、転倒して第2腰椎の圧迫骨折をして今も家で安静にしています。やっと、仕事に対しやりがいを感じていただけに残念です。しかし、今までの入院体験、リハビリ体験を活かして看護をしていたので、今回の体験を今後の看護に生かすつもりです。当初は田舎の姉、市内の姉にも来てもらっていましたが、何とか家の中は歩けるようになりました。久しぶりにパソコンに向かう事が出来ました。でも、いつ災難に合うかわかりませんね。マンションの隣の方、3軒隣の方に買い物、ゴミ捨て、朝夕の新聞を運んでもらったり食事を作っていただいたり、シップを貼って頂いています。以前から仲良くしていただけに、感謝の気持ちでいっぱいです。人と人との繋がりの大切さを思い知らされます。久しぶりに先生のブログを見ることが出来嬉しく思います。26日に大学病院の診察ですが、コルセットを付けて家の中を5分位歩くだけで痛くて、横にならないといけない状況でもう少し休まないといけない気がします。貴院でリハビリを受けた事を思いながら日々、焦りと開き直りの気持ちですが、少しずつ痛みは改善しているので頑張ります。やっと先生のブログを拝見出来ることが出来嬉しく思います。

  • senri より:

    スーさん、おはようございます。
    研修会などで発言されているスーさんの姿や言語からしますと、それなりの雰囲気がありますし、周囲には相応の影響力をもって迫っていると思います。
    私たちの世界は確かに悲観的に受け止めざるを得ないことも多いですが、だからこそ、そこに挑んでいる私自身がいます。それが少しずつ形になっていることを最近は感じてますから、そう捨てたものではない、と思っています。信州にある山は動かないかもしれませんが、私たちの世界の山は動きますよ。いや、明らかに動いています。
    前向けー、前!ですよ。

  • ㇲ― より:

    おはようございます。

    このところ公私ともやや立て込んでおり,なかなか以前のような余裕がなくなってきてしまいました。吉尾先生から健康についてご心配いただけるなんて大変恐縮です。

    また私の理学療法やリハビリテーションの考えにに多大な影響を与えてくださった,吉尾先生から”共感”というお言葉を頂け,これまた大変恐縮です。

    私自身,理学療法について以前より少しペシミスティックに捉えてしまっていることもありますが,患者さんやそのご家族にとって本当に有益なサービスを提供したい気持ちはより強くなっています。

    そういった意味で,これからも皆様とディスカッションを通してより良い方向性を模索できれば思っています。
    今後とも,ご示唆,ご教授のほどよろしくお願いいたします。

  • senri より:

    スーさん、お久しぶりです。
    もう半年近くご無沙汰だったのではないでしょうか?? お元気にお過ごしでしたか?
    いつも健康に気をつけるようにとスーさんからメッセージをいただいてましたが、逆にちょっと心配してましたよ。
    先日は名古屋にお越しいただき、ありがとうございました。あのような状況でしたから、ほとんどの方にご挨拶も満足にできないままでした。
    スーさんがこれまでのコメントでよくおっしゃっていたことを思い出しながらこのコメントに触れていました。
    スーさんの価値観に共感しながら、私も日々精進していきたいと思っています。特にこの歩行については他よりも大きな責任を負う存在ですから、私たち自身がもっと襟を正して積極的に動いていかなければいけませんね。
    今後ともよろしくお願いします。

  • ㇲ― より:

    こんばんは。
    先日は初めてサテライトカンファレンスに参加させて頂きました。

    症例提示してくださった発表者の方々の努力や,座長の方々の進行の進め方もあり,有意義に感じました。

    「ただの歩く練習なら,理学療法士でなくてもできるとよくいわれるが,PTではなくても行えることをPTは当たり前のように行えているのか,かつ専門職として歩行を科学できているのか」,「現在時点で効果的とされる歩行練習についてのシステマティックレビューやメタ分析は活用できているか,その上で個別性を考えられているのか」,「活動・参加のための歩行練習をどのようにとらえるべきか」ETC…もっと発言したいことがありましたが,参加者の方の発言からも学ぶことが多く遠慮させて頂きました。

    各々によって歩行の捉えかたも様々ですので,歩行の自立度,歩行能力,活動・参加における歩行といったように幅広い「歩行」というテーマを整理すると,今後さらに深い議論に発展しそうですね。

    これからの理学療法が”反証可能性がある”科学として存在しうるためにも今後もこのような「ホンネ」を語れる機会が増えることを願っています。

  • senri より:

    asukaさん、おはようございます。
    名古屋のサテライトカンファレンスではご協力いただき、ありがとうございました。
    歩行について興味をもつ集団の前でのプレゼンテーションでしたから大変でしたね。
    でもとてもいい機会でしたから、次の機会に十分活かせる1日になったのではないかと思います。
    ますますのご活躍を期待しています。

  • asuka より:

    こんばんは。
    名古屋では大変お世話になりました。
    会場の雰囲気に飲まれて自分らしい発表を満足にはできませんでしたが、
    今後に向けて課題の見えた貴重な時間になりました。
    吉尾先生の洗練された発言、重苦しい空気を一変する影響力に触れ、
    講師としての視点で改めて学ぶことが多くありました。
    討論も様々な方と歩行についてディスカッションができ、
    たっぷりあった討論の時間も足りないくらいに感じました。
    またこの続きができたらいいなぁと思います(^^)
    大畑先生においても高熱の中最後まで参加者共々引っ張って頂き、
    すごい方だと改めて実感いたしました。
    ありがとうございました。

  • c.t.n より:

    吉尾先生 おはようございます。
    はい。失礼いたしました。

  • senri より:

    c.t.nさん、おはようございます。
    ADLの受け止め方は個々によってさまざまです。当然のようにそれへの関わり方もさまざまです。
    回復期リハビリテーション病棟で行われるADLへの取り組みでは考えさせられることも多いです。
    その取り組みは結構難しいものだろうと思っていますが、現実的には軽視される傾向にあるように見えます。
    ところで、IC領域に問題をもつ人の紹介がありましたが、ここに具体的にお書きになるのは個人情報保護に抵触する可能性もありますので、ご配意ください。

  • c.t.n より:

    はい、そうです。
    ADLとは何か、ですか。どういう意味でしょうか。

  • senri より:

    c.t.nさん、こんにちは。
    札幌から東京に移動してきました。
    このコメントの中には皆で考えなければいけない事項がいくつか含まれていますね。
    今後の機会に症例を通して具体的に議論できるとよいと思います。
    ADLとは何かについても考えなければならないですね。
    ありがとうございます。

  • c.t.n より:

    こんにちは。
    senri先生、先程は申し訳ありませんでした。あらためて、注意していきたいと思います。
    先日、長下肢装具で立位・歩行を試みた方を確認できました。立位は正中位でしたが、歩行を行う時はじめの一歩が出てこないのです。その方は「出して、出して」と口頭のみの誘導でした。それではいけませんよね。左損傷ならなおさら誘導方法を考えなければならないと思います。
    名古屋では神経系から捉えた歩行であり、長下肢装具のより効率的な使用方法を多角的視点から考えることができました。活動の中での移動手段として獲得するためにはどうしたらいいのか。急性期において、なるべく早期からの歩行練習がよいことは誰もが周知していることですね。先を見据えた上で移動手段としての歩行を考慮するのか、活動の中での平衡機能を考慮した上で早期から歩行練習を行うのか、視点は変わってきますよね。一方で移動手段としてなら車椅子を考える方もいると思います。急性期からの車椅子駆動を考えてしまいます。特に急性期では半球間抑制や学習性不使用が生じやすいrecovery stageでもあるため、目的は何か、しっかりと考えなければいけません。
    私も悩まされることが多いのですが、歩行練習を行わない状況での車椅子駆動練習はどうなのでしょう。
    ドライバーは車輪を握らせても進みませんし、比較的後方へ進むことが上手な方が多い様に感じます。
    後方へ進むということは身体活動としてどのようなことが起こってしまうのか、上記を考慮し再考しなければなりません。
    改善を期待する家族に対してとても申し訳なく感じてます。

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