サルトリイバラ

八十八夜も過ぎ、日本は田植えの季節です。とは言っても、二期作なのか二毛作なのか、早稲なのか、晩生種なのかによっても田植え時期は違います。この頃の熊本平野を上空から見ると水田に張った水に太陽の光が反射して眩しいほどになります。

NEC_3566私の故郷では、この時期には田植え饅頭が各家庭で作られていました。田植え作業の休憩時間などに食べていたのです。私の実家は農業ではなかったので、田植え饅頭というものはありませんでしたが、ご近所からたくさんいただいていました。実に美味しい饅頭でした。そのうち、我が家でも作るようになり、季節感を味わったものです。
地方によって異なるようですが、田舎ではあんこ入りの団子を茗荷の葉で包んで蒸したものと、膨らし粉を入れた団子をサルトリイバラの葉に載せて蒸したものが一般的でした。サルトリイバラ1、2枚で団子を挟んで柏餅風にしていただくこともありました。茗荷もサルトリイバラも薬効がありますし、生活の知恵として用いていたのでしょうか。
サルトリイバラは猿捕茨と書きます。この写真はこのブログのためにあちこち歩き回って撮影してきたものです。ご覧のように、そこらにあるものに巻きひげを伸ばして巻きつき、少々のものが当たってもその形を崩さないのです。しかも、茎には棘があって、少年時代に山で遊んでいるとき、しばしば引っ掻いたりしたものです。文字通り、そこに追い込まれた猿は逃げることができず捕えられてしまうほどの茨である、ということです。子供の頃は新芽を摘んで食していました。まるでお猿さんのように。黄色っぽい花は秋になると赤い実になり、生け花やクリスマスの飾りの材料としても重宝されます。なんと、ユリ科の植物です。
特に薬として呼ぶときは山帰来(さんきらい)とも言うようです。毒消しのために山に行ってその実を食べて帰って来るという意味です。箕面の山手には山帰来という高級レストランがありますが、薬膳料理ということではなさそうです。

何故にサルトリイバラを紹介したか、皆さん、疑問でしょう?
被災された熊本、大分の皆さんたちにもそうあってほしいと思いますし、日々努力されている患者さんたち、そしてリハビリテーションの世界をより良いものにしたいと思っている人たちにもそうあってほしいと思うこと。それは「不屈の精神」です。これがサルトリイバラの花言葉です。

コメント (22)

  • senri より:

    c.t.nさん、こんにちは。
    サルトリイバラそのものをご存じない?
    それとも故郷では呼び方が違っていました?
    全国にありますから、ちょっと山に入ったら見かけることはできたかと思います。
    学会は肩の力を抜いて課題に向き合ってください。

  • senri より:

    Ytさん、こんにちは。
    昨日は研修会にお越しいただき、ありがとうございました。奥越以来ですかね?
    もう少しゆっくりした時間であればよかったのですが、お声を聞けなくて残念でした。
    学会期間中は基本的に神経のところにいます。
    ぜひ、お声かけください。

  • c.t.n より:

    吉尾先生 おはようございます。
    サルトリイバラというのははじめて聞きました。
    土地により微妙に異なるみたいですがこの時期は田植えの季節ですね。風土が感じられます。
    北海道での学会は有難く2日間の申し送りを受けました。去年とは緊張感が違います。
    よろしくお願いいたします。

  • Yt より:

    吉尾先生
    おはようございます。
    昨日の金沢の研修に参加させて頂きました。吉尾先生の話は変わらず刺激的で何度聞いても気付かされることが多々あります。
    ご多忙のようだったので挨拶出来ませんでしたが、来週の全国学会に参加させて頂くので
    またその時に挨拶出来ればと思います。
    昨日はありがとうございました、またよろしくお願いします。

  • senri より:

    aisakuさん、こんばんは。
    私もそのように思います。asukaさんは凄いですよね。
    そういうaisakuさんだって、ですよ。
    札幌でまた語りましょう。
    georgeさんの件、よろしくお願いいたします。

  • aisaku より:

    吉尾先生
    asukaさん、変わらず輝いていますね。とても刺激的です。
    asukaさんの通ってきた道のりが、今の彼女を形成しているんですよね。
    私も刺激を受けながら前に進みたいと思います。

    georgeさん
    札幌の会の参加表明ありがとうございます。
    下記のアドレスにご連絡いただけますか?
    申込先 :blogparty.yfh@gmail.com
    記載事項:名前 所属 職種 連絡先のメールアドレス
    宜しくお願いします。

  • senri より:

    georgeさん、こんばんは。
    ようこそブログにいらっしゃいました。
    楽しいこと、考えさせられること、いろいろありますから。
    札幌の会でも熱く語れたらいいですね。
    お会いできること、楽しみにしています。

  • george より:

    吉尾先生
    連絡が遅くなり申し訳ありません。
    札幌での学会でお会いできるのを楽しみにしています。
    お言葉に甘え、学会2日目の夜の会合に参加させていただきたいと思います。
    元職場の方と会う予定もあり、途中退席になるかもしれませんが宜しいでしょうか?

  • senri より:

    asukaさん、こんにちは。いつもありがとうございます。
    asukaさんのコメントや行動を拝見していますと、凄いなあ、と思います。
    多くの集団の中で目に留まるということは、それ相応の光を発しているということでしょう。
    もちろん、負の光を発している場合も目立ちますが、asukaさんの場合は明らかに好ましい光です。
    今後もますます輝いてください。
    札幌ではよろしくお願いいたします。

  • asuka より:

    おはようございます。
    先生の言われるようなプロフェッションとして恥ずかしくないような
    行動、言動ができるように日々努力したいと思います。
    札幌でお会いできるのを楽しみにしております。
    よろしくお願いいたします。

  • senri より:

    asukaさん、おはようございます。
    他人の人生の一端を担う職業には相応の責任を伴いますが、その思いが希薄な専門家?も多いように思います。
    それをきちんとやりますよ、と公言することをprofessと言います。
    近年、プロ野球等、負のイメージを持たない人たちを対象にしたプロも多くなりましたが、子供や被告人、患者さんのように社会的弱者の支援を行う教師、弁護士、医師などを本来はプロフェッションとしていました。
    プロであるということは社会が認めたものであり、それに対して十分応えていく責務があります。
    まずは自分を磨かなければ、というところでしょうか。

  • asuka より:

    こんばんは。
    簡単ではないからこそ、
    相手が自分に心を許したという表情をした時は格別に嬉しいです(^^)
    それと同時にその方の人生の一端を担っているという重責を感じます。

  • senri より:

    asukaさん、こんばんは。
    その人らしさを尊重し、寄り添いながら関わっていくとは言っても、そう簡単なことではありませんよね。
    感性を豊かにして取り組んでいきたいと思います。

  • asuka より:

    こんにちは.
    熊本の人には餡麩三喜羅よりもいきなり団子で,慣れ親しんだ地元のものがいいのでしょうね.
    こちらの自己満足で押し付けるのではなく,
    自らが考え選択できるように導くことが達成感につながるのだと感じます.
    きっと復興支援に行く場合も,遠くの県から来た人たちが勝手に行動するのではなく,
    同じ日本人として地元の人と一緒になって考え行動することが大切だと思います.
    患者さんに対しても医療者の自己満足を満たすのではなく,
    その人の生きてきた環境を考慮して,寄り添い共に考えて行動していきます.
    よい気づきを頂きありがとうございます.

  • senri より:

    松戸のKさん、おはようございます。
    熱いコメントをいただき、ありがとうございます。
    議論は正面から堂々と。皆さんで適切な症例検討がなされることを期待しています。
    私たちの周りには自身の考え方や生き方に示唆を与えてくれるものがたくさんあります。
    できるだけ興味を持ってそれらに触れていくと、楽しいことがいろいろ起こります。
    雑学は大好きですが、活かしてこそ意味を持ちます。
    松戸のKさんにサルトリイバラ・山帰来の薬効があることを期待しています。
    解毒作用があって、はれもの、できものに良いそうですよ。

  • senri より:

    asukaさん、おはようございます。
    大口屋さんのコーナーが名古屋駅にありますが、茶色になったサルトリイバラ(大口屋さんの生麩の名称を考えると山帰来が正しいかも)がパッと目に入るのです。しかも生麩だと分かれば、私は買わざるを得ないでしょう。
    熊本にはいきなり団子といって中にサツマイモと小豆餡が入った、正に田舎の団子があります。大分にもあります。田植え饅頭やいきなり団子を食べてみなぎる力を見せてほしいと思います。
    私たちも主人公である患者さんたちが達成感を得られるように、真摯に取り組んでまいりましょう。

  • senri より:

    チャーコさん、おはようございます。
    いつも逃さずブログをご覧いただき、ありがとうございます。
    日本人にはパンが好きな人もたくさんいますが、やはりまずは米。
    だからでしょうか、私が子供の頃に田植えをしていた故郷の農家の人たちの顔はエネルギーに満ち溢れているようでした。そのときにいただく田植え饅頭ですから、一段と美味しさが増すのでしょうね。
    一度、作ってみませんか?

  • 松戸のK より:

    吉尾先生、こんばんは。
    サルトリイバラの花言葉を心に秘めて、日々いろいろなことに
    負けないようにしなくてはいけないと改めて思う今日のブログ内容でした。

    私も明日、院内の任意の勉強会ではありますが、そこで症例報告を
    させてもらうことになったので、しっかりと「不屈の精神」を
    胸に秘めて戦って来ようと思いました!
    一歩ずつ進んでいけるよう努力していきます!

  • asuka より:

    はい,大口屋さんです.
    さすが先生,よくご存知ですね.
    サルトリイバラがユリ科というのは驚きでした.
    少年時代の思い出の場が地震に見舞われた先生の心境を思うと
    いたたまれない気持ちになり,また胸が熱くなります.
    負けずに,しっかりと歩を進めましょう!

  • チャーコ より:

    吉尾先生、こんばんは。いつもブログ読んでいます。
    本当、日本は田植えの季節ですよね。
    サルトリイバラの葉、私もあちこちで見かけます。
    あんこ入り団子、美味しそうですね。
    また千里リハビリ遊びに行きますね

  • senri より:

    asukaさん、こんばんは。
    このメッセージを書いたらすぐ反応しましたね。ありがとうございます。
    その生麩のお饅頭、私もいただいたことがあります。大口屋さんでしたっけ?
    名古屋に行った帰りに職場へのおみやげとして買って帰ったこともあります。
    花言葉がピッタリだな、と思います。
    このようなときだからこそ、私が小さい頃から親しんだサルトリイバラに登場してもらいました。
    負けずに、しっかりと歩を進めなければ。

  • asuka より:

    こんばんは.
    愛知県では「餡麩三喜羅(あんぷさんきら)」という生麩のお饅頭をサルトリイバラの葉で
    包んだものが有名です.
    上品な甘さでファンも多く,私も大好きな和菓子です.

    開発当初は麩の品質も不安定で,入荷ロットや四季毎にも品質が異なり,
    商品の出来上がりも不安定だったそうです.それでもあきらめずに開発を続け今に至ります.
    賞味期限は2日間.
    賞味期限を延ばすようにすれば遠方へのお土産にもしやすいですが,
    今の味,自然素材へこだわりを守るための2日間は譲れなかったそうです.
    『不屈の精神』がこの和菓子にもいきています.

    被災された熊本,大分の皆様もこの精神で現状を乗り越えてほしいと願いします.
    また,私自身もリハビリテーションの世界をより良いものにするために,
    リハビリテーションマインドは譲らずに不屈の精神で取り組みたいと思います.

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