責任
5月12日~14日、千葉県幕張メッセで第52回日本理学療法学術大会が開催されました。
ちょうどその期間中に、幕張メッセではEXILEとDOBERMAN INFINITYのコンサートが行われたため会場周辺は凄い人出になりました。学会参加者の黒服と、圧倒的に若い女性たちで占められたコンサート参加者たちの楽しいカラフルな服とが混在し、いつもの学術大会とは違った空気が流れた3日間でした。
そのため、ホテル確保も大変でした。幸いに2泊は会場隣接のホテルを確保できたのですが、最終日だけは電車で30分ほど離れた町のホテルになってしまいました。学術大会には全国から集まることから、after 7も楽しみですが、それぞれの宿が1時間くらいの範囲に広がっており、お店によっては宿から往復2時間という人もいたようです。
宴が終わって電車で海浜幕張駅に戻ったとき、ホームは若い女性たちで溢れんばかりの状態になっていました。コンサートが終わって帰路についた人たちの大集団ということですが、ホームから階段に向かうと一人の姿も見えなくなり、そのあまりもの違いに自分の目を疑ってしまいました。さらにその先に目をやると、この光景が飛び込んできました。ホーム上での事故を防ぐために改札・入場規制されていたのです。確かに制御が困難なこのような集団では起こり得るであろう問題を回避するための規制は必要でしょう。見事な統制に感心しながら宿に戻りました。
近年、患者さんたちの活動や社会参加について積極的に進めようという動きがあります。演題の中にもそのような取り組みに関するものがありました。歩行距離をもっと伸ばすようにということですが、どうも歩くことが目的であり、歩くことの目的がありません。欲求や動機づけは人間の行動にとって極めて重要ですが、ただ歩くことだけが計画・実行されていきます。それでは患者さんたちは楽しくないでしょうし、距離も伸びないでしょう。
病院の敷地外に出ることは許されない、という話をよく耳にします。病院の外にこそ目的をもって行ってみたいと思える場所があるのに、もったいないことです。コーヒーショップやコンビニ、スーパーマーケット、神社の森も、桜の咲く大きな公園もあります。敷地外に出ることを規制されているということは、起こり得る問題を回避するため、ということになります。患者さんたちが敷地外を積極的に歩くことで得られるであろう活動や参加の向上の可能性を、それを改善していく責任を持つ病院が回避していることになります。
理学療法士が起こるであろうと思い込んでいる痙縮という問題を回避するために、例えば歩行練習を行わない、装具を用いないということが行われています。過度な筋緊張は抑制の対象であって、積極的に活動させてはいけないという考えが根強く残っています。大方の論文では否定的で、むしろ逆の論が展開されてきているのに、です。結果、患者さんたちの歩行獲得の可能性が理学療法士によって摘み取られてしまうことになります。
今回の学術大会の中で、日本神経理学療法学会が掲げたテーマは「神経理学療法領域における理学療法士の責任」でした。学会最後のまとめとして組んだ大畑氏の教育講演では、この責任について突っ込んだ言及があり、最終プログラムとして相応しいものになりました。
コメント (16)
haruさん、おはようございます。コメントありがとうございます。
私たち専門職者としての存在意義は何か、そして病院のあり方はどうあるべきか、対象者を中心によくよく考え、行動しなければ、と思います。
私たちは患者さんたちの可能性を摘み取るために存在しているわけではないですから、ね。
学術大会お疲れ様です。
歩くことが目的になっていて、目的のために歩くということが無いということはとても良くわかります。
利用者様はQOLが高まることが一番の目標なのに、です。
それは地域に出れば著明で、理解できると思います。
どのような形でも◯◯をしたい!という欲望がとても強いと感じます。
どうしても病院にいると「◯◯はだめ、出来ない」というマイナスの言葉に引っ張られるという意見も聞きます。
少しでも可能性を見出すことがセラピストにとって重要な事ではないでしょうか。
けんぼうーさん、おはようございます。
コメントいただき、ありがとうございます。
今日はお目にかかれてとても嬉しかったです。特に先週と今週は学会、その他の出張などが重なり、病院内で自由に動ける時間があまり持てない状況でした。そのような中で、あの時間帯に2病棟のエリアでお会いできたのも、お二人の力かもしれません。奥様の治療の都合をみながらのわずか2時間の行動ですから、この偶然はそういう力によるものと思えてしまいます。
無事に終了されてよかったですね。生活の中で排除できる不安は取り除いた方がいいですし、また奥様の笑顔に反映されていくことを期待します。
けんぼうーさんが仰っているとおりですよ。私はそれが人間だと思います。その拘りは極めてノーマルですよ。むしろ、そのような気持ちを吐露したり、共有できる関係性があることは素敵なことだと思います。また、それを受け入れるか否かは個別性だという考えもありますが、一方では社会そのものに大きな障壁があって、前が見えず、具体的な活動に繋がらないことも現実に存在しています。しかも社会はそれをあまり理解していないように思います。専門領域にいる私たちにできることを考え、行動していかなければと思っているのですが・・・。
また、お会いしましょう。
asukaさん、おはようございます。
正に次代の主演者ですから、精力的に活躍されますよう、大いに期待しています。
吉尾先生、長らくご無沙汰しておりまして、失礼しました。
また、本日は突然にお伺いして、ご迷惑をおかけしたことかと思います。申し訳ございませんでした。
その後、おかげさまで妻のカテーテル治療は無事に終わりました。
これで、再発の危険性は、ほぼ、無くなったのではないかと思います。
目的を達成するための手段が、いつの間にか目的化してしまうというのはリハビリの世界に限ったことではありませんが、脳卒中や脊髄損傷による後遺症は失うものが大きすぎて、嫌でもそうならざるを得ない面もあると思います。
障害を負った自分でも出来ることを探しているうちは難しく、障害を負った自分だからこそ出来ることを見つけることが出来ればと思いますが、今なお、単純に元に戻りたいという気持ちが多くを支配していますので、まだまだ道のりは遠く険しいと思います。
しかし、そう思わざるを得ないのが、今の社会だと思う気持ちもあり、やはり、しばらくは今まで通りに過ごしてしまうように思います。
これでも長い目で見れば、本人の家族も多少は心境の変化があるのだと思いますが、そうした自分たちが正常なのか異常なのかもわからないくらい、情報化時代の中で情報不足に陥ってます。
制度的に難しい面があるかと思いますが、退院患者や家族に対しての追跡調査などを実施して、本当に本人や家族にとって有益なリハビリとは何かということを、あらゆる層の人が考えることが出来るものを集約できれば、また変わってくるのかもしれないと思ったりしています。
現状は、排泄や着替えの自立に重きが置かれており、介護保険制度と同様に、患者本人のためというよりは、その家族のためというイメージがあります。もちろん、それも大切なことに変わりないと思いますが、間違っているといわれても回復したいと願う患者や家族のためのリハビリというものがあっても良いのではないかと思ったりしています。
上手く書けず、とりとめのない内容になってしましました。
おはようございます.
最近別の分野の取り組みを進めており,
神経領域のアウトプットを十分できていませんでした.
自分の頭ではイメージはできていますので,具現化にむけて行動して参ります.
また,今回の学会では研究部会の時からお世話になっている先生にお会いしました.
その先生の想いを受け継ぎつつ,次代へ繋げるような取り組みをしたいと思います.
asukaさん、おはようございます。
学会、お疲れ様でした。会場で何度かお目にかかりましたので、神経領域に結構足を運んでいただいたと感謝しています。ありがとうございました。
私たち学会が取り上げたテーマが「責任」ということでした。
今回のブログやいくつかのコメントにも書きましたからここで述べることはしませんが、次代に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思います。
来年の学術大会ではその有言実行を楽しみにしていますからね。
学術大会、お疲れ様でした。
3日間とも最初から最後まで参加し、
aisakuさんの分まで吉尾先生の優しい笑顔を間近で拝見させていただきました。
今回は打ち合わせに割かれる時間が多く、一般演題を聞くことは少なかったですが、
先生のおっしゃるように、「目的」と「目標」を取り違えている場面はありました。
そのような中で大畑先生の教育講演は、「責任」をしっかり考える時間となりました。
患者さんに対し、自分に対し、周囲の人や環境に対して。
特に、自分の行動やその結果に対する責任はしっかりと考えなければいけません。
自らの責任を感じつつ、
どう時代を担っていくか、来年はその答えをもって参加したいと思います。
Katoさん、こんばんは。
学会上ではなかなかゆっくりお話しできる時間を作れせんでしたね。申し訳ございません。
お姿はときどき目に入っていたのですが、大声で呼びかけるわけにもいかず・・・。
今回も次回も会員の皆様にしっかり考えて役割を果たしていただきたいと願って企画しています。
どこまで届くかわかりませんが、私たちなりのメッセージです。
来年も大阪でお会いしましょう。
チャーコさん、こんばんは。
いつもブログを見ていただき、とても嬉しいです。
そして、コメントいただき、ありがとうございます。
チャーコさんは入院中によく努力されましたよね。今でも目に浮かびます。
それもきっと大好きなARASHIのコンサートを国立競技場まで見に行くという、とてもとても大きな目標があったからですよね。そのために歩けるように必死になれます。
私たちはチャーコさんから学んだことをこれからも大切にして活動してまいりますからね。
aisakuさんもいろいろお気遣いが大変ですね。
でも、そのお心遣いが好ましい結果を導いてくれると思います。
お気に入りの物が見つかればいいですね。
松戸のKatoです。先日の学術大会ではしっかりとご挨拶ができず、すみませんでした。
キョロキョロしていたり、進行方向が逆だったりとで、なかなかタイミングが見つけられず
ちゃんとお話ししたかったのですが、ご挨拶に伺えませんでした…(汗)すみません。
学術大会では大変興味深い内容が多く、脳のシステム障害に対するシンポジウム、大畑先生の
教育講演をはじめ、口頭、ポスターの内容が改めて日々の臨床を考えさせられる内容でした。
患者さんたちの可能性を探し、そこに根拠を持って広げていく「責任」を考える3日間となりました。
今年度の11月の東京での参加型フォーラムはもちろんのこと、来年度の神経理学療法学術大会にも
参加できるよう、私もaisakuさんのように妻の報酬系を高めていき、許可をいただけたら…
と思っています(笑)
こんばんは、吉尾先生。いつもブログ読んでいます。
理学療法学術大会お疲れさまです。
病院の建物から外に出てはいけないと私も8年前に千里リハビリに患者として入ったとき、そう思っていました。リハビリしながら病院の外のスーパーや春日神社や公園に行った時、自分の足ばかり気になっていました。8月に遠出でARASHIのコンサートを見に国立競技場まで行ったときは夢のようでした。今でも覚えています。
自分の責任は今でも守っています。
先生のご様子は他の運営幹事の方のフェイスブックでお見かけしておりました。先生の変わらない優しい笑顔でほっとしました。いつも学会でお会いしていたので、いざお会いできないと寂しいものですね。
来年の神経理学療法学会学術大会は予定に入れております。時間をかけてデザインを練りたいと思います。
「いたがき」は来年結婚15周年ですので、妻へのプレゼントの下見に行ってこようと思っています。
妻の報酬系を高めないと、私の活動にも制限がかかりそうです(汗)
aisakuさん、こんにちは。
珍しく、学術大会でaisakuさんのお顔をお見掛けしませんでした。いらっしゃらなかったわけですね。
来年の日本神経理学療法学会学術大会には演題を持って、ぜひお越しください。
「いたがき」の製品、いいですよねえ。何か買ってもらえるといいですね。
積極的に参加しなくては。
連合学会、大変お疲れ様でした。
最後の連合学会でしたので参加してみたかったのですが、他の用事などもあり参加を断念しました。個別ごとの学会も良いのですが、連合学会で一度に多くの知見が得られるのも知識の繋ぎ合わせから新しい発見につながるように感じました。
しかしながら、学会に参加した会員が約7000人としても、日本の理学療法士は約15万人。同じ思念の元、活動していくためにも、草の根活動が必要だと強く感じています。
そのためにも、自分にできることから一歩一歩進めていこうと思います。
話が変わり、あのいたがきさんが大分のデパートで期間限定の出店をするとのことでハガキが届きました。私の報酬系が刺激されましたので、早速行ってこようと思います。
やはり、目的が大事ですね。