南部鉄

この週末も大阪から東京、宮崎、盛岡の大移動になりました。
宮崎では第14回九州ブロック介護老人保健施設協会大会で生活期における脳卒中のリハビリテーションについてお話しました。国は急性期、回復期、生活期(維持期)の病期別に医療を展開するという政策を推し進めていますが、それぞれの期ごとの連携がうまくとれていないことが指摘されており、シームレスなサービスが求められています。
しかし、現状は連携が十分ではないということよりももっと以前に、それぞれの期の内容に問題が山積しているようです。脳卒中によって起こる問題の中で根本的なことが理解されないままになっていることがある、そのことが根拠に基づかないアプローチにつながっている、結果として対象者が一個の人間としての尊厳を損なわれている場合がある、という状況が私には見えます。どの期においてもです。
生活期にはそのような医療的問題を含んだケースが多く集まる可能性が大ですが、そこでの多くは人的、物的環境が医療的課題にしっかり取り組める状況にはありません。このような状況を解消すべく、それぞれのステージでこの問題に真剣に取り組んでいかなければならないのです。
盛岡では脳卒中になられた方々の潜在的能力をどのように引き出していくかというお話をしました。受講者には相当耳が痛い話だったろうと思います。知らない、分からないからトライしない。根拠もなく、しかも間違ったことを何の疑いもなく行い続ける。赤信号、皆で渡れば怖くない、という世界があります。そのような環境は潜在的能力を引き出していくことにあまり貢献しないように思われます。課題山積ではありますが、しかし、受講者の食い入るような真剣な眼差しはこれからの変革を期待させるものでした。
写真は泊まった宿のラウンジにあったものですが、盛岡と言えば南部藩。南部藩と言えば南部鉄。知識と経験と豊かな創造性、そして何よりも継続した努力の結集が形になった世界です。鉄には錆が付き物。鉄瓶は使わなければ錆が出ます。しっかり使えば黒光りもします。学ばなければ。

 

コメント (15)

  • senri より:

    smileさん、こんばんは。コメントいただき、ありがとうございます。
    私たちは専門家集団としてもっともっと努力しなければいけませんよね。
    この南部鉄の後に書いたハビリスで紹介しましたが、大田仁史先生のご講演を拝聴し、
    改めて襟を正すべきであると思いました。
    真っ白。そうですね。ゼロから積み重ねていかなければ。
    やりましょう。

  • smile より:

    先生、突然のコメントで失礼いたします。
    宮崎の研修会で、帰りに声をかけていただいた者です。

    先生のお話をお伺いするのは3回目になります。
    拝聴する度に、先生は私たち(PT・OT)の扁桃体をも、上手に刺激してくださるなあ、と思っています。
    ハッとさせられ、自分の患者さまへの気持ちやアプローチを考え直す機会となっています。

    経験年数ばかりが経ってしまいます。熱い気持ちを忘れず、長いものに巻かれ過ぎず、相手は何を求めているか、もう一度真っ白な気持ちで取り組んで行きたいと思わせていただきました。
    厳しくも優しいご講義、本当にありがとうございました。

  • asuka より:

    こんばんは。
    皆で力を合わせる一員になれるよう、努力していきます。
    今後もよろしくお願いします。

  • senri より:

    asukaさん、こんばんは。
    南部鉄器の鋳型を細かく掘る作業はとても細かく、大変なものです。
    でも、それがあってこそあのような鉄瓶ができるのです。
    私たちの世界にはまだそのようなものは存在していないのかもしれませんね。
    皆で力を合わせて前に進めましょう。

  • asuka より:

    リハビリは南部鉄器のように型が完成されていてそれに流れていくのではなく,
    型をしっかり作るところにまだいるように感じます.

    個々の患者さんの生活を考え,幸せに貢献するという大きな型に,
    みんなで協力し合い様々な模様を刻んでいきたいですね.

  • senri より:

    yamazakiさん、おはようございます。
    南部鉄で沸かしたお湯や木炭などを通した水で沸かしたお湯はまろやかで美味しいですね。
    折角の文化が衰退していくのはもったいないことです。
    現代の私たちがそのことを知らずして便利さだけを追い求めていくと、美味しいお茶に出会う可能性を引き出せないままに終わります。
    それが一個の人間の人生に関わることだったとしたら・・・。
    yamazakiさんは今年最後のお客様になります。
    特別なおもてなしを用意しているわけではございませんが、ゆっくりご覧いただければ幸いです。

  • senri より:

    ehara yusakuさん、おはようございます。
    お元気ですか?
    お近くで大変な事故もあって、大変でしたね。
    南部鉄の製造過程と製品そのものは私たちが学ぶべきもの満載です。
    そこに存在する者の責任感の違いなのでしょうか。
    しっかり取り組みましょう。

  • senri より:

    諸橋さん、おはようございます。
    いつも熱いおもてなしをいただき、ありがとうございます。そのおもてなしこそが私の潜在的能力を引き出してくれるのかもしれない、と思っています。きっと、そうです。ミラー細胞の働きでしょうか・・・?
    心から感謝しています。
    若者たちが必死にもがいているのを無視してはいけませんよね。

  • yamazaki より:

    吉尾先生 仙台の山崎です。いつもブログを楽しみにしています。南部鉄瓶は我が家でも大活躍しています。お湯が美味しくなります。わたしも現在他職種が連携してのプロジェクトに関わろうとしています。今までの枠組みを超えて一人の人間のために何ができるかを本気で考える必要のある時期に来ていると思います。年末にお邪魔いたしますが宜しくお願いいたします。

  • ehara yusaku より:

    夜分遅くに失礼します。
    いつも驚かされますが、スゴイ移動距離ですね。それだけ先生を必要とする方々が全国に待っているといことですね。
     先生の言葉にはいつも深い意味があり考えさせられます。確かに、急性期~療養まで各期において求められる事、また求めていかなくてはならないことがたくさんあります。しかし、臨床の場において実際には診療報酬・単位という枠組みを言い訳に、作業的になってしまっている現状が多くあるように感じます。先生の言葉にあるように人間としての尊厳、これこそが医療の基盤になくてはならないと感じます。
     しかし、そう感じながらも、私自身に何ができるのか、どう伝えていけばいいのか悩む一方です。その解決案こそ南部鉄器の製造過程なのかもしれませんね。私も調べてみたいと思います。

  • senri より:

    tetsuさん、こんばんは。
    毎年のことながら、今年もまた大変お世話になりました。
    体調は戻りましたか?
    私自身も盛岡ではエネルギーをいただいて帰ります。感謝、です。
    いただいたこの力をまた明日からのばねにしていきたいと思います。
    皆様によろしくお伝えください。

  • senri より:

    asukaさん、こんばんは。
    南部鉄器の実際の製造過程をみさせていただいたのですが、鋳型をきちんと作るところから細かい作業が求められます。そのようなきちんとした、しかも創造的な準備があって、形になっていきます。
    そのような場面を拝見するたびに、PTの現状を嘆いてしまいます。
    皆さんの力が必要です。

  • tetsu より:

    こんばんは。
    岩手のtetsuです。
    この度の研修会、ご苦労さまでした。
    毎回先生の研修会参加後は、普段の患者様との関わり方について「自分は本当にこれでいいのだろうか…?」と立ち返ることができる瞬間が訪れます。
    またいろいろと自分なりに考え直してみます。
    南部鉄器の製造過程を見て、物事を大成するには手間暇をかけることが重要であることを感じ取ることができました。
    またこれからもお世話になりますので、よろしくお願いします。

  • asuka より:

    こんにちは.
    週末の大移動お疲れ様でした.

    南部鉄の製造は,はじめにデザインを決めるそうですね.
    形だけでなく模様までも細かくだそうです.

    リハビリはそれぞれの期で目的を明確に設定したり,達成しなくても、
    時間の経過で次の期に移ります.
    その結果,課題は達成されないまま山積みになっている部分もあるように感じます.

    また,南部鉄は錆びないように使用した後に,しっかり乾かすという一手間も必要です.
    リハビリも錆び付かないようにその一手間を惜しまずに行うべきなのでしょうね.

    知識と経験と豊かな創造性,継続した努力から学ぶものは多いですね!

  • 諸橋 より:

     吉尾先生、盛岡での講演ありがとうございました。先生の診療に対する魂の叫びが東北の若い療法士に伝わったと信じています。後は受け取ったことをいかに具現化するかです。今度、盛岡に吉尾先生が来られる時には今回の講演をきっかけに前進していたいと思います。今後ともご指導宜しく御願いします。

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